起業するということ㉟
/未分類

たった一人で始めた「技術士」受験のための勉強は
困難を極めた。ネットと参考書のみでの独学は、
厳しくつらい日々であった。理系の高度な試験で
商学部出身の文系の私には、統計学やベクトルの
数式は難解過ぎた。3回目の受験時に東金沢駅から
試験会場の金沢工業大学へ向かうため、タクシー
に乗った。同じ受験生の40代ほどの男性が、私の
行き先を聞いていたらしく、「相乗りさせてもらえ
ませんか。」と聞いてきたので、もちろんOKして
同乗することになった。彼はおもむろに話かけて
きた。「技術士の試験は、私はこれで10回目なん
です。今回落ちたら、もうあきらめようと思って
ます。」と。こちらは聞いてもいないのに、かなり
重たい話を聞かされて、一層試験への緊張感が高
まった記憶がある。長時間の試験のため、休憩
時間にチョコレートを食べて、脳を活性化させ
ながら試験に臨んだ。そして奇跡的に受かった。
4回目の受験であった。最後の渋谷の道元坂での
面接試験の朝、ホテルで気合を入れ過ぎて、
髭剃りで鼻の下を切ってしまい、絆創膏を貼った
情けない顔で受験した。これで落とされたら、
二度と髭剃りは使わない、と心に決めて挑んだ。
試験会場を出て、手ごたえを感じていた私は
道玄坂でガッツポーズをして「ヨッシャー!」と
叫んでいた。ホテルから出てきたカップルたちが
白い目で見ていたのは言うまでもない。
㊱につづく。