PART 2
試行錯誤を繰り返した研究
10年がかりで理想の木材保存処理木材を開発
そもそも小澤さんが、のちにマーベルウッドと名付けることになる木材の開発を思い立ったきっかけは何だったのですか。
小澤
事の始まりは、私が以前、福井市の老舗商社、三谷商事に勤めていた20数年前までさかのぼります。1998年に社内で新規ベンチャー事業の提案募集があり、私は天然木材の新しい活用について提案しました。仕事で公共工事関連業務などに携わるなかで、木材活用の可能性を感じたのです。
ただ、私は木材については素人だったので、木材活用というと公園などのデッキや柵、ベンチといったイメージしかありませんでした。なので、屋外で木を使うなら高い耐久性が欠かせないと思ったのです。
その頃、銅系の木材保存剤が本格的に普及し始めていたのですが、天然木材が緑色に染まっていることに違和感がありました。しかも、加圧注入した金属が環境に溶け出すことも知り、もっと天然の木材らしさを生かすことができて、環境面や健康面でも安全なものを探究したいと思ったのです。
「無色透明」「安全」「高耐久」は妥協せず
そこから開発が始まったわけですね。
小澤
実は、当時も無色透明の木材保存剤は存在していました。アンモニア系の有機系木材保存剤です。しかし、成分の溶脱が速く、耐久性に難があったため、より耐久性の高い銅系木材保存剤に取って代わられていたのです。
つまり、無色透明で安全、しかも高い耐久性という3つの特性は、開発当初から目標になっていたわけですね。
小澤
そうです。実際には、富山県林業試験場(現富山県農林水産総合技術センター森林研究所)の黒崎宏先生と一緒に研究を始めました。
さらに、大阪の(株)片山化学工業研究所(大阪市東淀川区)と、三谷商事㈱とが提携して木材保存剤の開発に取り組みました。片山化学工業研究所は、水環境技術で広く知られた会社で、黒崎先生と大学院時代の同級生である野村安宏さんが代表取締役社長を務めています。
しかし、開発当初は失敗の連続でした。
例えば、ヒバ油やヤシ油といった天然樹脂系の成分を用いた保存剤は、注入直後は性能が出るのですが、速く揮発が進んで十分な耐久性を得られませんでした。
あるいは、試験室では結果が出たのに、暴露試験をしたら数年で保存剤がすっかり溶脱してしまうこともありました。
試行錯誤を繰り返して、ようやく狙い通りの木材保存剤の開発に至ったのは2011年のことです。それを機に、私はこの木材保存剤の普及に専念したいと思い、商社を辞めてマーベルコーポレーションを設立しました。