企業するということ㉒
/仕事

東京虎ノ門での新社会人生活はなにより楽しかった。
1984年の東京はバブルに浮かれ、上司や先輩も
非常に羽振りがよく、毎週飲み会三昧、お中元
にはお得意様に夕張メロンを配り、展示会は
ニューオータニに全国から取引先を招待し、
ヨーロッパのベルベットやシルクタフタ、
レオナールのプリントなど高級服地が飛ぶ
ように売れていた。
その会社の社長は、大手商社のやりて営業マン
だった人物。自分の得意先をもって独立したのだ。
おしゃれな人で、同じ鉄紺のスーツを5着仕立てて、
月曜から金曜、毎日違うスーツを着てくるような人
だった。社長室に入るとき、ドアを2回ノックして
入ったら、「小澤君、それはヨーロッパではトイレ
ノックだよ。」と、きれいな東京言葉で怒られた。
そのカリスマ性、スノッブな雰囲気は、若い私に
大きな影響を与えた。 ㉓に続く。